退職して帰国する時の納税処理 (タックス・クリアランス)

昨日、タックス・クリアランスについて質問を頂きました。ありがたいものです。良い機会ですので今回は、マレーシアの会社で働いていた人が、退職して帰国する時に必要な納税処理、タックス・クリアランスについてまとめます。

なお、退職してマレーシアを出国する方向けの納税処理に参考になる話と、マレーシアで会社設立して起業する方や会社経営者にも参考になる様な注意事項も書いておきます。

会社は、日本人社員が卒業を迎え退職する際には、エンプロイメントパス(EP)のキャンセルをしなければなりません。その他に会社を退職する本人は、マレーシアを出国して、しばらく戻って来る予定がない場合、タックス・クリアランス (Tax Clearance) をしておく必要があります。

タックス・クリアランスを行わず、その年の納税金額が不足する場合、イミグレーションにて出入国を拒否されます。脱税になりますので非常に厳格です。納税金額が多かった場合は、タックス・クリアランスを行うことで、税金の還付を受けられます。

こちらは会社で行う手続きではありませんが、会社で用意しなければならない書類もあります。また、卒業を迎える社員を気持ちよく送り出してあげるためにも、会社としてはアドバイスをできる様になっておきたいものです。

タックス・クリアランスに必要な書類

  1. オリジナルパスポート
    提出するパスポートのコピーのページに不備がないか確認するためのものです。

  2. パスポートの全ページコピー(白紙ページ含む)
    各ページの出入国のスタンプの記録の有無を確認します。そのため、白紙ページの記録も必要です。

  3. NR/R/51
    SCHEDULE OF ENTRY AND DEPARTURE FROM MALAYSIA

    パスポートにスタンプされている出入国の記録をまとめた書類になります。マレーシアの滞在日数を確認するたまの資料になります。

    なお、i-Cardを利用しての出入国でスタンプを押していない場合、後々トラブルになる可能性もあるので十分注意が必要です。

  4. フォーム BE
    RETURN FORM OF AN INDIVIDUAL

    タックス・クリアランスを行う時は、通常その年のフォームBEは発行されていません。そのため、前年度のフォームBEの西暦が書いてある部分に打ち消し線を入れて、その年の西暦を記載して使います。

    例えば、2016年にタックス・クリアランスを行う場合、2015年のフォームBEの右上にある2015に線を引いて、2016と書きます。

    2015年版フォームBEのダウンロード

  5. 前年度のフォーム EA (C.P. 8A)
    STATEMENT OF REMUNERATION FROM EMPLOYMENT

    会社から社員に年度末に発行されている前年度の報酬ステートメントになります。

  6. PCB 2(II)
    STATEMENT OF PAYMENT BY EMPLOYER

    タックス・クリアランスする年の月額税金控除である MTD(PCB) をまとめた資料になります。 また、CP38 (Salary Deduction Order) がある場合は、そちらもまとめます。

    トランザクションNo.の記入などが必要なため、この資料は会社側でまとめる事になります。

    PCB 2(II)-Pin. 2012 のダウンロード

  7. CP21
    NOTIFICATION BY EMPLOYER OF EMPLOYEE’S DEPARTURE FROM MALAYSIA

    従業員がマレーシアから出国することについて会社から税務署へ通知するための資料になります。そのため、この資料は会社で用意する必要があります。

    CP21 [Pin.1/2015] のダウンロード

  8. 給与明細
    給与明細は必ずしも提出の必要ありませんが、タックス・クリアランスの申請時に、確認が必要なことが生じる事もありますので、手元に準備しておくと便利です。

タックス・クリアランスを行う税務署 LHDN

タックス・クリアランスは、どこのブランチの税務署でもできるわけではありません。個人のタックスナンバーが登録されている税務署でのみ申請が可能となっております。登録されている税務署以外では、個人の情報を確認する事ができないためです。

どこの、税務署に登録されているか不明な場合は、どこの税務署に登録されているのか、最寄りの税務署の窓口で調べてもらえる事ができます。なお、訪問した際は、どこの税務署に登録されているか確認するよりも、その場でタックス・クリアランスする旨を伝えた方が得策です。

訪問した税務署でタックス・クリアランス出来ない場合は、どこの税務署に訪問すれば良いか教えてもらえます。

最寄りのブランチを探すのはこちら

Tax Clearance 必要書類が用意できない場合

退職して日本に帰国する際に、タックス・クリアランスを行いたくても、必要な書類を入手できない場合があるかと思います。会社側で書類を用意しないケースなどが考えられます。

会社側で、必要な書類を用意しない理由としては、退職する人への意地悪の場合もあるようですが、税務署へのMTD(PCB)の支払い行っていなかったり、退職者のエンプロイメント・パス(EP)を取得せずに働かせていた場合がある様です。(納税とは直接関係は無いのですが。。。)

マレーシアで起業や会社経営するには、会社秘書やタックスエージェントなどの業者を含めた他人に頼りきりなため、ちょっと知識が希薄な事と、ちょっと責任感に欠如がある様な残念な話を聞くことがあります。

毎月収めている MTD(PCB) が十分に多いということは、納税金額が十分であるためタックス・クリアランスを行わなくても、問題になるケースは少ないと思われます。(ただし、還付金を受け取ることもできません。)

しかし、会社側で毎月の給与から徴収していても、税務署にMTDを収めていないケースもあります。この場合は、実際の納税金額が不足するためイミグレーションにて入国ばかりでなく出国を拒否される事になるので十分注意が必要です。

そのため、書類がそろわない場合でも、タックス・クリアランスをすることをおすすめします。

書類が不足するのに、どのようにタックス・クリアランスを行うかなのですが、これ、税務署の方で臨機応変に応じてもらえるのです。

当然といえば当然なのですが、何かを承認してもらったり、発行してもらう申請と異なり、自ら納税をしますと申し出ているのに、それを拒否するというのは、税務署の役割としておかしな事になりますから、当然対応してもらえます。

MTD(PCB)を会社の方で支払いを拒否している場合でも、自己申告で納税の意思を表示することが可能です。担当者によっては、書類がないからと受付を断る場合もありますが、事情を丁寧に説明することで、なぜ書類が不足するのか説明して、どうすれば良いか相談して下さい。

マレーシアにてお世話になった事と、マレーシアのルールに基いて是非とも納税させて下さいと伝えてみて下さい。あなたの感謝の熱意は通じるはずです。どの資料を用意すれば良いかアドバイス頂けますよ。

なお、会社側で意図的にMTD(PCB)の納税を行っていない場合、会社で働いていなかった事にしたり、個人事業として申告しなさいと言われる事があるかもしれませんが、虚偽の報告などは絶対避けて下さい。

そんな人情の無い会社のために、税務署に嘘をつくなんてリスクが大きすぎます。 ((((||゚Д゚))))ヒィィィ!

そのためにも、会社から発行される給与明細を保存しておく事は大変重要です。仮に、給与明細を発行しない会社があった場合、銀行振込の記録や、小切手のコピーなどを残しておく事が必要です。

マレーシアの起業家・経営者向けの注意事項

MTD(PCB)に関する注意事項

まず、会社が注意しなければならないのは、MTD(PCB) の納税になります。MTD は、Monthly Tax Deduction をイニシャルをとったもので月額税額控除の事で、日本で言うところの源泉徴収税になります。(マレー語では同じ意味の、Potongan Cukai Bulanan)

つまり、MTD(PCB) は、読んで字の如く毎月納税しなければならないものです。日系企業でも、MTD(PCB) の納税を誤魔化そうとする会社があるので、税務署の職員から、信頼のある日本人がそんな事するのかと、あきられる話を聞くことがあります。

MTD(PCB)を収めていない事ばかりで無く、税務署への登録が行われていないかった場合でも、当然ですが簡単に発覚してしまいます。税務署の方から監査が直接入ることにもなります。

今まで聞いた事はありませんので、実行する会社はまず無いと思いますが念のため書くと、MTD(PCB)を納税せずに、毎月徴収しておいたMTD(PCB)を、都合が悪くなったからと社員に払い戻すなんて事をやってはなりません。

ちょっと考えれば分かる事なのですが、その悪知恵は、毎月納税の義務があるものを意図的に隠匿したとみなされてしまいます。当然ですが、ちゃんと納税して下さい。

エンプロイメント・パス(EP)と納税の関係

雇用している日本人社員のエンプロイメント・パス(EP)を取得していないからと、MTD(PCB)を納税をしていない会社があるかもしれません。

しかし、就労ビザのエンプロイメント・パス(EP)と源泉徴収のMTD(PCB)は、全く異なる性格のものです。こちら勘違いする背景に、エンプロイメント・パス(EP)を取得してから就労するものと思われているからだと思います。

実際のところは、現在のエンプロイメント・パス(EP)の取得の手続きは、会社の方で社員を雇用してから申請する事になります。雇われる方からすると、就職してからエンプロイメント・パス(EP)を会社にて取得してもらう事になります。

つまり、エンプロイメント・パス(EP)の取得手続き中は、エンプロイメント・パス(EP)が無い状態で社員は就労する事になります。しかし、エンプロイメント・パス(EP)が無いからと言って納税義務が無いわけではありません。

マレーシアで収める税金は、源泉となる所得がマレーシアにある場合になります。これは、マレーシアのビザの有無とは一切関係がありません。

エンプロイメント・パス(EP)が無い場合でも、源泉となる所得がマレーシアにあるのであれば、納税する義務はあります。つまり、エンプロイメント・パス(EP)が無いからと言って、MTD(PCB)を会社の方で収めないというのは非常に問題なのです。

最近は、イミグレーションと税務署で、情報を共有する事がある聞くことがあると思います。情報がどのように共有されているかは勘違いを避けるため割愛しますが、社員がマレーシア出入国の制限されないためにも、MTD(PCB)を含む納税義務を優先する必要があります。

また、納税処理を誤魔化すことで、退職した社員が問題に直面するのではなく、当然会社の方が問題に直面する事になるのです。

アドバイスや手続きを依頼している業者が対応しないからと言って、会社の方で手続きしなくて良いというわけではありません。自己責任の希薄な会社とみなされて対応を断られている可能性もあります。

コンサルタント会社や手続き代行業者の話をアドバイスとして聞いたら、その確認を取るくらいは必要です。


マレーシアの事業で栄華を極める日本人が、以前、言っていた事を思いだしました。

退職する社員や退職した社員に嫌がらせをする事もできるけれども、本当にそれで良いのか。

退職する社員が新たなステップに向かって進む道を選んだのか、それとも会社に嫌気をさしたからなのか。お前の会社の現在の姿である。

退職する社員を卒業を迎えたと、全社員で送りだせる会社にしたいものです。

「退職して帰国する時の納税処理 (タックス・クリアランス)」への3件のフィードバック

  1. この手の情報はなかなか少ないのと、何年か前の情報だと既に変わっている可能性があったりするので、新しい情報すごく助かりました。ありがとうございます。

    LHDNに確認に行ってきまして、無事に書類を確認/受理してもらいました。

    以前に疑問に感じていたこともすべてクリアになりました。
    あくまで私個人の例ですが参考にここに記載させていただきます。

    ー1月に退職しEPキャンセル、2月に観光ビザで再入国の予定があるが、この場合はEPキャンセルのタイミングでタックスクリアランスをすること。LHDNとしては2月に私がちゃんと帰ってくるかわからないため

    ールールとしては退職日の1ヶ月前までにタックスクリアランスを行わないといけない。私の例では残り退職日まで2週間しかなかったが、なんとか処理は完了してくれる

    ー退職日の1ヶ月にタックスクリアランスを行うにあたって会社側が発行するCP21には次月に払う予定の給料まですべて見込みで記載する

    ーEPキャンセルとタックスクリアランスは関連させなくてよい。並行して進めてもいいしどちらが先でもいいが両方完了させること

    ーMTD(PCB)の未払い分(退職日1ヶ月前はまだ支払われていないPCBがある)については空白でよい

    ー税金過払い分の返済のためには会社からTAX Borne Letterを発行してもらい、振込先の口座をそこに記載すること

    ーTax Clearance Letterは会社と従業員に1通ずつ送信される。急ぎであればLHDNに取りに行くことも可能

    HRも担当者によってはよくわかっていなかったりするのだと思います。私の会社のHRは
     -再入国の予定があるのであれば、今ではなく次の就職先を決めてマレーシアを去る時にタックスクリアランスをすること
     -税金に関するデータは入力していてLHDNで確認可能なので、会社から発行する書類はない
     -通常EPのキャンセルが終わってからタックスクリアランスをするのでEPキャンセルの申し込みを待て

    と言ってましたが、これらはすべて間違いです。
    HRの言うことを鵜呑みにせずに自身で確認しながら進めて行くことが大事だと思いました。

    1. Motoki さん

      非常に詳しい情報ありがとうございます。

      情報ソース(ルールやガイドラインなどの原文)に限りなく近いところの、情報を入手されている方は、すごく少ないため、ご自身で赴いて入手されて情報はとても貴重です。特に、税務署LHDN視点での考え方はとても参考になりました。問題が起きなくても、そうすべきであるという考え方は必要だなと思いました。税務署に対しての思いやりも必要ですね。

      また、私の入手している情報とも、細かい部分で違いがあっても、全体として整合性がとれてる完璧な情報に思われます。細かい部分の違いなどは、LHDN のブランチや担当者などによる、ちょっとした違いの程度に思えます。

      本当に、貴重な情報ありがとうございます。
      これから、タックスクリアランスされる方に、とても参考になると思います。

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